そうだ、お医者さんになろうシリーズ vol.02

将来を見極め、使える奨学金を探し出せ!

2016.07.19 Tue

wellib6

医学部進学は狭き門だし、何より学費が高いから…と最初からあきらめていないだろうか。子どもたちの「なりたい職業ランキング」で、いつも上位に入っているお医者さんが、限られた富裕層の子どもだけに開かれた道であるわけはない(…と信じたい!)。そこで「お医者さんになろうシリーズ」第2回目は、医学生のための修学資金貸付制度や奨学金を利用して医学部で学ぶ道について考える。

半分以上の学生に修学資金を貸与する大学も

2016年4月に医学部が新設された東北医科薬科大学(旧・東北薬科大学、宮城県仙台市)。医学部の新設は国内で37年ぶり、と話題になったが、それ以上に大きなインパクトを与えたのが、入学定員100人中、最大55人まで受けられる独自の修学資金制度を設けたことだ。

同校の医学部は6年間の学費が3,400万円。修学資金はA方式(定員35人)とB方式(定員20人)に分かれており、A方式なら6年間で3,000万円が貸与される。B方式の貸与額は1,500万円だが、宮城県以外の東北5県の修学資金制度(約1,100万円~)にも応募できるので、併用できれば2,600万円~となって大幅な費用軽減となる。

なぜそこまで手厚いのか―。それはもちろん医学部の新設が、東日本大震災からの復興を目的に、東北の地域医療を守る人材を育成、そして「定着」させるという大きなミッションを掲げているからである。修学資金の返還免除は、いずれも東北地方の医療機関で一定期間(A方式なら10~12年間、B方式なら8~9年間)勤務することが条件。出身地や出身校の限定はなく、全国から優秀な人材を募集する。

初めての入試が行われた平成28年度は、志願倍率が24.6倍。大多数が就学資金枠での出願だったという。

医師不足の解消をもくろむ奨学金は多種多様

東北医科薬科大学の例にみられるように、地域医療の担い手となる医師不足を解消しようと、自治体などが修学資金を貸与する制度は全国、多種多様にある。

例えば、へき地を中心に県全体で医師不足が深刻化している島根県では、「地域枠」と「緊急医師確保対策枠」という2種類の推薦入試制度を設けている。「地域枠」は、県内でへき地とされる市町村に生まれ育った人、などかなり出身地が限定されるが、「緊急医師確保対策枠」は全国どこからでも応募できる。

特徴的なのは、明確に島根県でへき地を含めた地域医療に貢献したい、という強い使命感を持った学生を対象としていること。そのため出願前には指定された県内の医療機関で医療体験活動を行って適正評価を受ける必要があるほか、県担当者との面接もある。

しかし「緊急医師確保対策枠」で合格すれば、奨学金として入学金と授業料とは別に、月額10万円も貸与される。平成28年度の入試状況を見ると、「緊急推薦枠」の受験者は17人で合格者は5人(地域推薦枠は受験者17人に対して合格者10人)。島根県の実情を理解し、地域のために働こうという強い意志があるなら、経済的な心配なく医師を目指せることとなる。

医学部生に対する奨学金貸与は、何も地方に限ったものではない。東京都も順天堂大学、杏林大学、東京慈恵会医科大学で地域枠入学試験を実施しており、6年間の学費(全額)と月額10万円の生活費を貸与している。しかし小児医療、周産期医療、救急医療、へき地医療のいずれかにおいて、指定された医療機関で9年間、医師として従事することが返還免除の要件だ。

進路の制限が利用者の足かせに

このように自治体が医師確保のために行っている奨学金貸与は、卒業後の勤務地や診療科を限定しているものが多い。しかし中には制度を利用していても、在学中に進路の変更を希望する学生もいるだろうし、最初からその気はないのに推薦枠で受験し、医師免許を取ったらさっさと奨学金を返納して去っていく人もいるらしい。

例えば最近の報道では、地方の某国立大学医学部を「地域枠」で卒業した学生13人のうち3人が県外で就職した、とのこと。卒業後は指定した病院で概ね9年間、働くことを返済免除の要件としているケースが多い。要件が満たされなかった場合は、10%程度の利息を付けて一括返済することなどが義務付けられているが、それでも人材が思うように定着しないことは問題視されている。また修学支援制度を設けても条件に合う学生の応募がなく、追加募集をしている自治体もあった。地域に根付く医師の養成、確保の難しさがよく分かる。

いかに情報収集し将来を見極められるか

ただ、経済的理由で医学部進学をあきらめていた人にとって、奨学金や修学支援制度が医師になる夢をかなえる一つの道筋であることは間違いない。奨学金について調べれば自治体だけではなく、大学独自のもの、民間病院が行っているもの、など数多くあるのには驚いた。それぞれに要件が違うので「いかに情報収集できるか」が、学費の負担なく医学部に通うための大きなポイントとなるだろう。

ただしこれらの制度には、留年しても通常の在学期間を超えての貸与はないこと、卒業後2年以内に国家試験に合格すること、といった要件を付けていることがほとんど。当然だが、学業には真面目にのぞまなければ大きなリスクを背負うことになる。また卒業後は、結婚などライフステージの変化もある年代だけに、産休や育休を取った場合に返還免除の期間がどうなるか、といったことも注意してみておきたい。

そして募集のある地域や診療科目で医師となることについてよく考え、進路を見極める必要があるのは言うまでもない。もしも医者として「病気で苦しんでいる人を助けたい」という使命感があるならば、本当に必要とされている場所で力を注ぐ、というのは全うな選択である。また医師が一部に集中する「偏在問題」を解消しようと、医師不足の地域では待遇や労働条件の見直しが進んでいるし、地方での暮らしに価値を見出す人もいるはずだ。

とはいえ、実際に勤務するとなれば難しい実態があるのだろうし、理想と現実のギャップに悩む医師もいるだろう。しかし返済が免除になるまで、嫌々、勤務することは医師としてあってはならないこと。だからこそ修学資金制度を利用して医師になる道についてよく考え、真剣に将来と向き合ってほしい。その結果として、学費を理由に夢をあきらめていた人たちが、奨学金のおかげで医師となり、人々の助けになるのであれば、これほどハッピーなことはない。

(Text:吉岡 名保恵)