けがは消毒せずに水道水!消毒液は細菌より人体細胞を破壊する「敵」だった

2016.06.21 Tue

wellib5

今、膝を擦りむいたとしたら、あなたはどういう行動をとるだろうか―――。

大人になって出血するほどの擦り傷を作ることはほとんどないが、子どものころはしょっちゅう膝小僧を擦りむいた。傷口が赤や黄色の消毒液で染まっていた記憶がある人もいるだろう。または透明の消毒液をシュッシュと噴射するあの音とにおいを懐かしく感じる人もいるかもしれない。よく転ぶ小学生だった筆者は、傷を乾かすスプレーも使っていた。

けがを「消毒して乾燥させる」は非常識

ところが今は、常識がひっくり返っている。前述の対処法は全て間違いとされる。

「消毒して乾燥させる」の真逆、「消毒しないで乾燥させない」が新常識ということを、どれだけのオトナが知っているだろうか。消毒液を使うとかえって治りが遅くなるという考え方が主流で、学校の保健室からも消毒液が消えて行っている。

ではけがをしたら、まずどんな手当てが必要か。正解は「止血して水道水で洗うこと」である。

消毒液は細菌を殺すチカラがあるが、これから傷を治そうとする人体細胞までやっつけてしまう。むしろ、人体細胞の方が無防備なので強いダメージを受け、さらに傷を深くする。消毒して殺菌したからといって、化膿が防げるものでもないらしい。

肝心なのは流水でジャージャー洗うこと

皮膚にはもともと常在菌がたくさんいる。例えば傷口に消毒液を振りかけて常在菌を死滅させても、それは一時的なこと。すぐに毛穴や汗腺に潜んでいた常在菌でいっぱいになる。むしろ常在菌は傷に対しての悪さはせず、化膿を引き起こす悪い細菌たちをはねのけるチカラがあるとも言われている。

ではなぜ「水」でなければならいのか。水道水でもミネラルウオーターでも構わない。とにかく大量の清潔な流水が必要なのである。化膿は傷口に異物が残った場合に起こる。それを防ぐため、水でジャージャー砂やゴミなどを洗い落とす必要があるのだ。

傷口にガーゼや絆創膏もNG行動

流水による応急処置が終わったら、次に大切なのは「傷を乾燥させないこと」である。傷を乾かすスプレーはもってのほか。細胞は乾燥させると死滅する。そのため、傷をじゅくじゅくさせて治すのだ。子どものころ、ガーゼや市販のキャラクター絆創膏を貼ったりしたものだが、これもNG!ガーゼや絆創膏を当ててしまうと、吸収して乾燥してしまうので、治りが遅くなる。

人体は実にうまく出来ていて、傷を負うと色んな細胞が集まって一生懸命治そうとする。じゅくじゅくは傷口からにじみ出る体液によるもの。これらが傷口を早く治してくれる。治癒に必要な細胞たちに対し、「集まれー!」と呼び寄せる「細胞成長因子」が血小板などから分泌されるのだ。

そのため、乾燥させない湿潤療法(うるおい療法、モイストケア)が自然治癒への一番の近道。ラップに白色ワセリンを塗り毎日取り換える。市販の「創傷被覆材」(ハイドロコロイド材)でもOK。ドラッグストアで見掛けることも多くなった。筆者の子どもが自転車で転んだ時に実践したが、驚くほど速くきれいに自然に治った。

この療法はやけどにも用いられる。もちろん異物が取り除けない場合や傷の程度によって、医療機関を受診すべきケースもあるので注意していただきたい。

それにしてもけがのあとに出てくる体液が、けがを治す万能薬の役目を果たしていたとは。人体の理にかなった構造に改めて神秘を感じた。もう膝に赤チンを塗った少年を見かけることもなくなるだろう。

(text:大楽 眞衣子)